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岡山地方裁判所 昭和44年(行ウ)46号 判決 1974年6月27日

原告 岡山ゴルフ株式会社

被告 岡山税務署長

訴訟代理人 清水利夫 外七名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事  実 <省略>

理由

一  請求原因一の事実(原告の係争年月分物品税申告及び納付、本件課税処分、不服申立て)、被告の主張(一)の事実(原告取扱いの製造ボールの製造方法、右製造ボールが市販リカバーボール、再生ボールと同一種類であり、物品税法所定の課税物品であること)、同(二)1の事実(本件ゴルフボールの移出数量、移出価格)、本件ゴルフボールが物品税課税対象である場合、同(二)3のとおりの計算根拠に基づいて別表一の本件課税処分の差引き納付すべき税額(加算税とも)が算出されること、修理ボールとは古ゴルフボールのガタパーチヤを取り除かないで破損箇所だけを補修したものであること、原告の昭和三八年、九年度のガタパーチヤ総使用量、ゴルフボール生産個数(内訳とも)が被告主張のとおりであることは、いずれも当事者間に争いがない。

二  本訴は、以上が当事者間に争いのない事実であるので、本訴の争点は、結局本件ゴルフボールが被告主張のとおりゴルフボールの表面にかぶせてあるガタパーチヤを取り除き、これを別のガタパーチヤをかぶせる行為にかかる前記製造ボールであるのか、それとも原告主張のとおり前記修理ボールであるのかの点につきるので、以下、これについて判断する。

<証拠省略>、弁論の全趣旨によると、

1(イ)  原告は、岡山市築港新町に本店並びに工場を有し、昭和四一年七月から本社を東京都に移転したが、右工場では、設立以来、現代表取締役三村林の兄訴外三村東が工場長をし、本件課税期間頃は、常時男子従業員一名、女子従業員数名を工員として使用し操業していたこと、

(ロ)  しかし、右従業員らは、前記製造ボールの加工はしていたが、一人として前記修理ボールの加工に従事したことがないこと、

2(イ)  昭和三八年ないし昭和四一年頃、国内のゴルフボール市場は、フアーイースト社製品、ダンロツプ社製品が各三割強位、ブリジストン社製品が二割位出まわり、右大手三社製品合わせて九割位が市場を占めていたこと、

(ロ)  そして、右三社の製品は、すべてゴルフボールの外皮を加硫していたこと、すなわち、ゴルフボールの外皮は、ガタパーチヤ約七〇パーセント、天然ゴム約一〇ないし二〇パーセント、酸化チタン約四ないし一〇パーセント、極く微量の硫黄、亜鉛をゴムローラーで練り合わせて作られたものであるが、このように硫黄を加えるのは、ガタパーチヤ分子とゴム分子、ゴム分子相互間を結びつけるためであること、

(ハ)  ところで、右のように加硫したゴルフボールの外皮の一部破損箇所に別の外皮をあてがつて、これを金型焼付けとする通常のゴルフボール製造工程により接着することは、古ゴルフボールの前記加硫の作用のため技術的に不可能であること、

(ニ)  実際に、昭和三〇年ないし昭和四五年頃、前記フアーイスト社において総生産量の約一、二割、前記製造ボールと同様の再生ボールの加工をしていた際、その原料として回収されて来た古ゴルフボール中に、前記修理ボールは一個もなかつたこと、

3(イ)  ゴルフボール一個あたりの外皮(ガタパーチヤ)使用量は一一グラム前後であること、

(ロ)  被告主張のとおり原告の昭和三八、九年度のガタパーチヤ総使用量について、右各年度の原告主張の修理ボールも前記製造ボールと同視したうえ、一個あたりのガタパーチヤ使用量を算出すると、昭和三八年度は一〇・六五グラム、昭和三九年度は九・八グラムの数値が得られること、

4  ちなみに、本件ゴルフボールは、原告の受払帳、加工未収金元帳、納品書等では、修理ボール、ゴルフボール(修理)等と記載されてはいるが、その移出価格は前記製造ボールと何ら変らなかつたこと

が認められる。

(ニ) これに反して

(イ)  <証拠省略>によると、本件ゴルフボールは、前記修理ボールであり、原告の工場において前記従業員もその加工をしていたとか、或いは一般従業員の就労していない夜間及び日曜日等に前記工場長三村東が、物故した男子従業員である義兄とともに、自己の妻にも手伝わせて、その加工をしていたとし、又<証拠省略>も右同様とするが、これらは、前示<証拠省略>に照し、たやすく信用できないばかりか、前記本件ゴルフボールの生産個数に徴し到底信用できないところであり、

(ロ)  <証拠省略>によれば、ゴルフボール一個あたりのガタパーチヤ使用量は一五、六グラムとするのであるが、<証拠省略>に照らし、にわかに信用できず、

(ハ)  <証拠省略>が本件ゴルフボール加工当時の修理ボールないしガタパーチヤであるという原告代表者尋問の結果も<証拠省略>に徴し、にわかに信用できず、

(ニ)糸ゴム使用量に基づく原告の主張は、被告主張のとおり前記製造ボール一個あたりの糸ゴム使用量について肯認できる資料がないので、採用するに値いせず、

(ホ)  <証拠省略>によつても、原告主張の被告回答当時、被告が本件ゴルフボール自体を確認したうえ右回答をなしたと認めるに足りる証拠はなく、

ほかに前記(一)の認定をつくがえすに足る証拠はない。

(三)前記(一)の認定事実によれば、本件ゴルフボールは被告主張のとおり前記製造ボールと認めるのほかなく、従つて、被告がこれを前記製造ボールと認定したうえ本件課税処分をなしたことについて違法の点はないというべきである。

三  よつて、原告の本訴請求は理由がないから棄却すべく、行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 平田孝 南三郎 大串修)

別表一、二<省略>

別紙一<省略>

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